昨日のまんがで、「家」を継ぐことにこだわっていたお岩さんがなぜ自ら家を出たのかと疑問に思うかもしれません。

それはこういう理由なのです。

夫・伊右衛門が家に帰らなくなり、家もどんどん貧しくなっていく。
お岩さんは「あ~あ、私には親類も親身に話合える人もいない・・・夫を頼って暮らすしかないのに、いつの頃からか博打かなんかで外遊びして家は貧しくなる一方、私の着物すら売ってしまう始末・・・私が男だったら外で稼いでくるのに。そして、私が男であったら伊右衛門なんかにこの家を取られることもないのに・・・」

と女であることの口惜しさと、一人孤独を感じていたそんなとき

夫の上役である伊東喜兵衛の家に呼ばれ大いにもてなされます。そして

「あなたの夫の伊右衛門はほんとうにダメな男だ。博打やら女遊びやらひどいもんだ。我々は同心(警察みたいなもの)という役目であるのに、お上に知れたらどんなお咎めを受けるか・・・妻であるあなたから言ってやってください」

なんて話をされ、家に帰ると伊右衛門が待っていて「亭主の留守にどこに行ってた!」とお岩の髪をつかんで顔を殴った!


・・・ひどいDVですが、これも実は伊東喜兵衛と伊右衛門の策略。お岩さんの堪忍袋の緒が切れるように仕向けたんです。

伊右衛門の博打や女遊びというというのも噓。本来まじめな伊右衛門は博打も女遊びもしていないのですが、しばらく伊東喜兵衛の家に身を隠して遊び歩いているふりをしてたんです。もちろん、お岩さんが「博打のために夫が売ってしまった」と思った着物も伊東喜兵衛の家にあります。

しかし、そんなことは知らないお岩さん、夫から暴力をふるわれショックを受けているところで「伊東様なら自分を理解してくれる」と信じてしまったのです。

それで、伊東喜兵衛の家に駆けこんで夫の非道を訴えると「わかった。それでは私が奉公先を紹介するから2.3年外に出ていなさい。その間に私が伊右衛門を説得して離縁させ、あなたにいい再婚相手を見つけてあげるから」

というわけで、お岩さんは伊東喜兵衛が伊右衛門を追い出してくれると信じて家を出てしまったわけです。まさか、夫と上司が結託しているとは夢にも思わないですからね。
お岩さんの孤独につけこむなんてほんとにひどい話ですよ!!


まあ、こんな感じでこの「四谷雑談集(よつやぞうたんしゅう)」は人の心の機微が描かれていておもしろいです。

ちなみに伊右衛門の再婚の際、ほんとは仲人をたてたかったのに、町の人は「6月に離縁して7月に再婚なんて変じゃないか」と怪しんで誰も仲人になってくれなかったとか、盛大に婚礼の儀を行うつもりだったのに酒と料理目当ての3人しか来てくれなかったとか、江戸の人の倫理観も垣間見えて面白い。

そして、この「四谷雑談集」の方の話をもとに書かれた小説が京極夏彦氏の「嗤う伊右衛門」

この小説の中のお岩さんはキリっとしてかっこいい女性!
ちなみに怪談小説ではないです。文句なしに面白いミステリー。 また、「四谷雑談集」を読んでみたい方。
こちら↓のブログに要約したものが載ってます